「ばかなことしたのね、おねえさん」
気がつくと、わたしは何処までも広がる闇の中にいました。
目の前にはぼうっとした光につつまれた、あの女の子が口をとがらせています。
「髪のながいお姉さんは死ぬはずだったのに、あなたがきゅうにじゃまするから
 コクチョウがびっくりしてまちがえちゃったじゃない!どうしてくれるの!」
「まちがえちゃった…?じゃあ、由比ちゃんは!?」
女の子はぷりぷり怒りながら、黒板をふくようなしぐさをしました。
すると闇の一部がふきとられたように明るくなり、白い部屋の映像が浮かび上がりました。
どうやらそこは病院の一室でした。いろんな機械につながれてベッドに横たわる由比ちゃんと、
その手を握って泣いている喬木くんの姿。
「よかった…たすかったのね」
同時に、『まちがえた』という意味もわかりました。…そうか。わたしが、しんじゃったんだ。
でもいいよね。由比ちゃんとちがって、わたしには泣いてくれる人なんかいないから。
「よくないよ!あのおねえさん…ええと、ゆいちゃん?ゆいちゃんはしぬ予定だったから、
 身体が生きてたって魂はもう戻れないの! あー……からだとたましいセットで
 もってかないと、ヤマさまにこっぴどく叱られるよぉ〜…」
「魂が……そんなのないよ!ずうっと意識がないままってことでしょう!?
 由比ちゃんの魂をからだにもどしてあげてよ!」
「だから、無理なんだってば!」

「ひなちゃん……」

そのとき、やわらかな声がわたしを呼びました。

そこにいたのは由比ちゃんでした。
由比ちゃんのたましい……といったほうが
正しいでしょうか。
「ごめん、ごめん由比ちゃん…
 わたしが、へんなことしたから」
「いいの、ありがとうひなちゃん。
 かみさまが決めたんでしょう?
 私は、今日死ぬ運命だったんだよ。
 それより……私のほうこそごめんね。
 ひなちゃんまで……」
由比ちゃんの手は、たましいだけになっても
しっとりして白いままでした。
「ひなちゃん、おねがいがあるの」
「おねがい?」
「……そう。あのね、わたしの身体を
 つかってほしいの」

「喬木くんはね、ああ見えてとても繊細なの。あのままじゃ彼は一生、私が目覚めるっていう
 かなわない希望を抱えたまま生きていってしまうんだって……」
そばで聞いているみならい死神の女の子は、腕組みをして何度も頷きます。
「だから……ひなちゃんが、失ってしまった身体のかわりに、私の身体に入って…私として生きて…………」
「だって……それじゃ、由比ちゃん………………」
「勝手すぎるお願いだってわかってる、けど…そうすれば、ずっと三人一緒にいられるから…………」
おねがい。
もう一度そう言って、由比ちゃんははかなげに微笑んでみせました。

…………………………。
わたしは…………

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